はじめに
「Appleから、見覚えのない6桁の確認コードが届いた」「サインインが要求されました、という通知が突然出てきた」「パスワードを入れても、ログインできなくなった」。そんな経験をして、「もしかして乗っ取られたのでは」と不安になった方は、少なくないと思います。
Apple Accountは、旧称のApple IDのことです。iPhoneの写真やメモ、連絡先、購入したアプリ、iCloudのバックアップなど、生活のあらゆる情報がひも付いています。第三者に入り込まれると、その影響は小さくありません。
ただ、気づいた時点で行動すれば、被害を小さくできる可能性が高まります。この記事では、Appleの公式サポートに書かれている「乗っ取りの兆候」を5つに整理し、気づいたらすぐやる対策、再発に備えた回復手段の準備を、順番にお伝えします。専門用語は、出てきたところで説明を入れます。
結論:この5つのどれかに当てはまったら、まずパスワードを変更
先に、全体の流れをお伝えします。
- Appleの公式サポートは、乗っ取りの兆候として、覚えのない通知、覚えのない確認コード、見覚えのない操作の形跡、パスワードが使えなくなる、デバイスを勝手にロックされる、といった例を挙げています。
- ひとつでも当てはまり、心当たりがない場合は、Apple Accountのパスワードを、他で使っていないものに変更します。
- そのうえで、サインインしているデバイスの一覧に、見知らぬ端末がないかを確認し、あれば削除します。
- 確認コードや「同意する」の操作を、電話やメールで頼まれても、応じないでください。Appleのサポートが、コードをたずねることはありません。
- 落ち着いたら、2ファクタ認証や回復手段の準備を見直します。
ひとつ目の兆候が出ただけでは、「必ず乗っ取られている」とは限りません。それでも、早めに対処しておけば、後悔は少なく済みます。
乗っ取りに気づくサイン5つ
ここでは、Appleの公式サポートのページで挙げられている兆候を、わかりやすく5つにまとめました。
サイン1:身に覚えのないアカウントの通知やメールが届いた
Appleから、覚えのないアカウントの動きについて連絡が届くことがあります。たとえば、心当たりのない端末へのサインインに、あなたのApple Accountが使われたという内容です。また、自分では変更していないのに、パスワードが変更された、という連絡も、この例にあたります。
ここで気をつけたいのが、メールやメッセージ自体が、偽物のこともある点です。本物のように見えるメールのリンクは、押さないでください。確認したいときは、メールのリンクではなく、iPhoneの設定アプリや、公式のサイトから、自分で開いてください。
サイン2:頼んでいない確認コードが届いた
次のサインは、リクエストした覚えがないのに、2ファクタ認証のコードが届くことです。信頼できるデバイスに表示される場合も、テキストメッセージ(SMS)で届く場合も、あります。
2ファクタ認証とは、パスワードに加えて、もう一つの確認を求める仕組みです。パスワードだけでは入れないように、スマートフォンに届く6桁のコードなどを、追加で使います。
このコードが身に覚えなく届いたということは、誰かが、あなたのApple Accountに、サインインしようとしている可能性があります。画面に「サインインが要求されました」というような通知と一緒に出たときは、心当たりがなければ、「許可しない」を選んでください。そして、届いたコードは、誰にも教えないでください。
通知が短時間に何度も続いて届くこともあります。誤って「許可」を押してしまわないよう、画面をよく見てから操作することが大切です。
サイン3:見覚えのない動きの形跡がある
3つ目は、自分では覚えのない操作の跡が見つかるケースです。Appleの公式サポートでは、たとえば、次のようなものが挙げられています。
- 送信した覚えのないメッセージがある
- 削除していないはずのアイテムが、「削除済み」に入っている
- 変更していないはずの、アカウントの詳細情報になっている
- 追加した覚えのない「信頼できるデバイス」が登録されている
- 覚えのない購入の履歴がある
ふだんから、メッセージや購入の履歴を、ときどき見ておくと、違和感に気づきやすくなります。
サイン4:パスワードが使えなくなった
4つ目は、いつも使っているパスワードで、ログインできなくなったことです。単なる入力ミスや、変更の覚え違いのこともあります。ただ、他のサインと重なっている場合は、第三者がパスワードを変更した可能性があります。よくあるケースとしてはアプリのダウンロードができなくなりパスワード入力してもサインインできない症状。
自分で変更した覚えがないなら、後の章で紹介する、パスワードのリセットの手順に進んでください。
サイン5:デバイスを勝手にロックされた・紛失モードにされた
5つ目は、第三者の操作で、iPhoneなどがロックされたり、「紛失モード」に設定されたりすることです。紛失モードとは、なくしたデバイスを探すための機能で、画面をロックし、連絡先のメッセージを表示できます。
自分では設定していないのに、画面にこうした表示が出ているなら、アカウントに入り込まれた可能性を、真剣に疑ってください。
5つのサインを見たときの考え方
どれか一つでも、心当たりがなければ、「念のため対処する」のが安全です。反対に、確実に自分が操作したものだと確認できる場合は、慌てる必要はありません。ご家族が、あなたのiPhoneを操作していた、新しい端末を追加した直後だった、というケースもあるためです。
気づいたらすぐやる対策
ここからは、Apple公式サポートの案内にそった、具体的な対処の手順です。順番に進めてください。
手順1:サインイン要求の通知は「許可しない」を選ぶ
「サインインが要求されました」のような通知が出ていて、心当たりがなければ、「許可しない」を選びます。ここで「許可する」を押すと、画面に6桁のコードが表示されます。そのコードを、誰かに伝えたり、見知らぬ画面に入力したりすると、アカウントに入られてしまいます。
手順2:Apple Accountのパスワードを変更する
まず、パスワードの変更です。Appleは、ほかのサービスと重複しない、強力なパスワードにするよう案内しています。
- 「設定」アプリを開く
- 画面の上にある、自分の名前をタップする
- 「サインインとセキュリティ」をタップする
- 「パスワードの変更」をタップして、画面の案内にそって、新しいパスワードを設定する
パスワードは、他のサイトやアプリと使い回さないことが大切です。誰かが、別のサービスから漏れたパスワードを、試している可能性もあるためです。
手順3:自分で変更できないときは、パスワードをリセットする
第三者にパスワードを変更されて、自分で変更できない場合は、パスワードのリセットを行います。Appleの公式サポートに、手順が載っています。
それでもリセットできない場合や、アカウントにサインインできない場合は、Appleのアカウント復旧のページ(iforgot.apple.com)から、復旧の手続きができます。復旧のための待機期間が経過すると、再びアクセスできるようになる、と案内されています。待機期間は、状況によって異なります。
また、確認コードがそもそも受け取れず、手が止まってしまう方は、テックスタイルchのiPhone紛失・盗難時にiCloudへログインできない!確認コードが受け取れない場合の対処法もあわせてご覧ください。
手順4:アカウント情報と、デバイスの一覧を確認する
パスワードを変更できたら、次はアカウントの中身を確認します。パソコンやiPhoneのブラウザで、Appleのアカウントページ(account.apple.com)にサインインしてください。
- 個人情報やセキュリティ情報に、知らない内容があれば、正しい内容に訂正する
- 「デバイス」の項目を開いて、見覚えのないデバイスがあれば、削除する
見覚えのないデバイスを削除すると、そのデバイスには、確認コードが表示されなくなります。
手順5:メールと電話番号の状況を確認する
Appleの公式サポートは、Apple Accountに関連付けているすべてのメールアドレスと電話番号について、状況を把握できているか確認するよう、案内しています。具体的には、次のような確認です。
- メールを使っているプロバイダー(サービス会社)に問い合わせて、不審なログインや転送の設定がないか確認する
- 電話番号の契約先の通信会社に、SMSの転送が勝手に設定されていないか確認する
SMSの転送が設定されていると、あなた宛ての確認コードが、第三者に届いてしまうおそれがあるためです。
手順6:購入や請求の履歴を確認する
覚えのない購入や請求がないか、確認します。Appleからの領収書のメールや、購入の履歴を見て、身に覚えのないものがあれば、Appleの公式サポート(App StoreやiTunes Storeからの請求に覚えがない場合の案内)にそって、対処してください。
手順7:同じパスワードを使っているサービスも変更する
Apple Accountと同じパスワードを、ほかのサービスで使っている場合は、そちらも、早めに変更してください。ひとつのパスワードが漏れると、使い回している他のサービスにも、影響が広がるおそれがあります。
乗っ取りの入口になりやすい、フィッシングと「コードを教えて」電話
Appleのサポートは、確認コードやパスワードを聞きません
Appleの公式サポートは、Apple Accountのパスワードや確認コードを、他の人に教えないよう、明記しています。さらに、Appleがサポートの際に、この類の情報をたずねることはない、とも書かれています。
また、Appleが、ウェブサイトにログインするよう頼んだり、2ファクタ認証の画面で「同意する」をタップするよう求めたり、デバイスのパスコードや認証コードを提供させたりすることは、決してないとされています。
「セキュリティ機能をオフにして」と言われたら、詐欺です
Appleの公式サポートは、2ファクタ認証や「盗難デバイスの保護」といったセキュリティ機能を、オフにするよう頼むことも、Appleは決してしない、と説明しています。「アカウントを取り戻すために必要です」などと言われても、応じないでください。
詐欺の電話には、よくあるパターンがあります
公式サポートでは、詐欺の手口として、次のような特徴を紹介しています。
- 実在するAppleの電話番号に似せて、電話をかけてくる(発信元の偽装)
- 「あなたのiCloudに誰かが侵入した」などと伝えて、不安をあおる
- 「今すぐ対応しないと、不正が続く」と、強い切迫感を作る
- 本物そっくりの偽サイトに誘導して、サインインさせる
電話が疑わしいと感じたら、いったん切って、公式のサポートの窓口から、自分でかけ直してください。
怪しいメールやメッセージの報告先
Appleを装った疑わしいメールは、Appleが案内している専用のアドレス(reportphishing@apple.com)に転送して、報告できます。SMSの場合は、スクリーンショットを撮って、メールに添付して送ります。
偽のメールの見分け方や、フィッシングの典型的な手口については、テックスタイルchの「ご利用のApple Accountによる最近のダウンロードについて」フィッシング詐欺の見分け方で、詳しく解説しています。
今スグ欲しい、乗っ取りに強くなるアイテム
ここで、アカウントを守る備えとして役立つアイテムを、ひとつご紹介します。
Yubico YubiKey 5C NFC(セキュリティキー)
セキュリティキーは、USBメモリのような見た目の、小さな外付けの認証デバイスです。Apple Accountでは、2ファクタ認証に加えて、任意で設定できる、フィッシング対策を強めるための機能として用意されています。
セキュリティキーを設定すると、新しいデバイスやウェブでサインインするときに、パスワードに加えて、「物理的なセキュリティキー」か「信頼できる別のApple製デバイス」のどちらかが必要になります。これにより、確認コードを電話などで聞き出される、という手口を防ぎやすくなります。
Appleの公式サポートには、使えるキーの例として、YubiKey 5C NFCが挙げられています。NFC(近距離無線通信)とUSB-Cの両方に対応しているため、iPhoneにかざすだけで使えるほか、USB-Cのポートがある端末にも接続できます。
導入する前に、知っておきたい注意点もあります。
- セキュリティキーは、最低2つ用意する必要があり、最大6つまで登録できます。
- 信頼できるデバイスとセキュリティキーをすべてなくすと、アカウントから完全にロックアウトされるおそれがあります。
- 保管は、自宅と職場など、複数の場所に分けることが、Appleから案内されています。
- 対応するiOSは16.3以降です。
回復手段の準備:何かあっても慌てないために
乗っ取りの被害からの復旧は、あらかじめ準備をしておくと、スムーズです。ここでは、Appleの公式サポートに沿った準備を、紹介します。
2ファクタ認証を、有効にしておく
2ファクタ認証をまだ設定していない場合は、設定してください。パスワードが盗まれても、不正アクセスされにくくなる、と公式サポートに書かれています。
信頼できる電話番号とメールアドレスを、最新にしておく
機種変更や番号の変更をしたまま、登録が古いままだと、コードが受け取れず、困ることがあります。Apple Accountに登録している電話番号とメールアドレスが、現在も使えるものかを、ときどき確認しておきましょう。
復旧用の連絡先を、決めておく
Appleには、アカウントに入れなくなったときのために、信頼できる人を「復旧用の連絡先」に設定する機能があります。ご家族など、信頼できる人を指定しておけば、復旧のときの助けになります。設定できる項目の名前や場所は、iOSのバージョンによって異なる場合があるため、Appleの「アカウントの復旧について」のページで、最新の手順を確認してください。
復旧キーは、慎重に判断する
「復旧キー」は、アカウントを復旧するための、長い文字列のキーです。安全性は高まりますが、紛失すると、復旧が難しくなるおそれがあります。初心者の方は、仕組みをよく理解してから、設定するかどうかを決めてください。
盗難デバイスの保護を、オンにしておく
Appleの公式サポートは、iPhoneが誰かの手に渡り、パスコードを知られてしまう可能性も否定できないため、「盗難デバイスの保護」をオンにすることを勧めています。あわせて、デバイスのパスコードも、推測されにくいものにしておきましょう。
パスワードを、他人に教えない・貸さない
パスワードを人に教えたり、自分のApple Accountを他の人のサインインに使わせたりしないよう、Appleは明記しています。自分のアカウントで、知らない人や信用できない人がサインインすると、その時点で、アカウントの安全は損なわれたことになる、とも書かれています。
やってはいけないこと
通知に、よく見ないで「許可」を押す
焦っていると、通知の内容を読まずに、「許可」を押してしまうことがあります。心当たりがなければ、必ず「許可しない」を選んでください。
電話やメールの相手に、コードを教える
「サポートです」「確認のため」と言われても、6桁のコードやパスワードを伝えてはいけません。教えた瞬間に、アカウントに入られるおそれがあります。
メールのリンクから、サインインし直す
「アカウントが停止されます」といったメールのリンクから、サインインの画面を開くのは避けてください。偽サイトの可能性があるためです。設定アプリや、公式のサイトに、自分で入ってください。
慌てて、デバイスを初期化する
初期化は、データを消す操作で、乗っ取りの対処にはなりません。まずは、パスワードの変更とデバイスの一覧の確認から、進めてください。
症状や通知を、消してしまう
不審な通知やメールは、削除する前に、スクリーンショットなどで、記録しておくと安心です。後でAppleや警察に相談する際に、役立つことがあります。
それでも困ったときは
パスワードをリセットできない、確認コードが届かない、不正な購入の対処に迷う。そんなときは、Appleのサポートに相談できます。詐欺にあったと感じる場合は、警察への相談も、選択肢です。
どこから手をつければよいかわからないときは、LINEサポートでも、状況をお聞きしています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 身に覚えのない確認コードが届きました。乗っ取られたのでしょうか?
A. すぐに乗っ取られたとは言い切れませんが、誰かがあなたのApple Accountに、サインインしようとしている可能性があります。コードは誰にも教えず、「サインインが要求されました」という通知が出ていたら、「許可しない」を選んでください。そのうえで、パスワードを変更しておくと安心です。
Q2. 「サインインが要求されました」の通知が何度も届きます。どうすればいいですか?
A. 心当たりがなければ、そのたびに「許可しない」を選びます。通知が続く場合は、Apple Accountのパスワードを変更し、2ファクタ認証が有効になっているか確認してください。
Q3. 誤って「許可」を押してしまいました。
A. 表示されたコードを、誰にも伝えていなければ、すぐにパスワードを変更し、デバイスの一覧を確認してください。コードを入力したり、伝えたりしてしまった場合は、乗っ取られた可能性があるため、本記事の対策を、順番に進めてください。
Q4. パスワードを変更できません。どうすればいいですか?
A. パスワードを第三者に変更された場合は、パスワードのリセットを試します。それでもできない場合は、Appleのアカウント復旧のページ(iforgot.apple.com)から、復旧の手続きを進めます。復旧には、待機期間が設けられている場合があります。
Q5. 見覚えのないデバイスが登録されていました。
A. Appleのアカウントページ(account.apple.com)の「デバイス」から、見覚えのないデバイスを削除してください。そのうえで、パスワードも変更しておきましょう。
Q6. Appleのサポートを名乗る電話で、コードを聞かれました。
A. Appleのサポートが、確認コードやパスワードをたずねることはありません。電話は切って、公式のサポートの窓口から、自分でかけ直してください。
Q7. 2ファクタ認証は、オフにしても大丈夫ですか?
A. オフにすることは、おすすめしません。パスワードが盗まれたときの、大切な防御になっています。また、「オフにして」と頼む電話やメールは、詐欺です。
Q8. セキュリティキーは必ず必要ですか?
A. 必須ではなく、任意の機能です。ただ、フィッシングなどへの対策を強めたい方には、選択肢になります。最低2つ必要で、すべてなくすとロックアウトのおそれがあるため、保管方法を考えたうえで、検討してください。
Q9. 乗っ取りを防ぐために、いちばん手軽な方法は何ですか?
A. 他のサービスと使い回していないパスワードにして、2ファクタ認証を有効にし、確認コードを誰にも教えないことです。この3つだけでも、リスクをかなり下げられます。
Apple Account乗っ取り関連記事
まとめ
この記事の内容を、もう一度整理します。
- Apple公式サポートが挙げる兆候は、覚えのない通知、頼んでいない確認コード、見覚えのない動き、パスワードが使えない、デバイスの勝手なロックなどです。
- 気づいたら、「許可しない」を選び、パスワードを変更し、デバイスの一覧を確認します。
- 自分で変更できないときは、パスワードのリセットや、iforgot.apple.comからの復旧を進めます。
- 電話やメールで、確認コードやパスワード、セキュリティ機能のオフを頼まれても、応じません。Appleがそれらをたずねることは、ありません。
- 落ち着いたら、2ファクタ認証、電話番号とメールの見直し、復旧用の連絡先、盗難デバイスの保護などの準備を整えます。
- セキュリティキーは任意の機能で、最低2つ必要です。すべてなくすとロックアウトされるおそれがあります。
不安なときほど、手順を一つずつ進めることが、いちばんの近道です。今日、設定を見直しておくだけでも、いざというときの安心につながります。操作に迷ったときは、LINEサポートにご相談ください。


